石について

 

景色は色々。

ジュエリー製作を始めた頃から、徐々にひとつの石の種類にフォーカスするようになりました。

デンドリティックアゲート(Dendritic Agate)は瑪瑙(めのう)の一種です。日本名では忍石(しのぶいし)と呼ばれます。

写真のように見えるものもありますが、これは自然に出来た模様です。
特徴的な樹状模様は、二酸化マンガンが瑪瑙の薄い層に入り込んで現れます。酸化鉄の影響があるものは赤系の色が現れるようです。
私はインドから仕入れた石を使っています。
とても薄く模様が入っているため薄くカットされたものが一般的かなと思います。石のカット、研磨は大変な作業だろうと想像します。
削りすぎると模様そのものが消えてしまう。

彫金を始めた頃、初めて石を買いに行きました。それまでは石は好きなものの仕入れに行くという感覚はなく、緊張して行ったことを思い出します。
たくさんの綺麗な石がある中で目に留まったのが、まるで風景写真のような石でした。
木々のような、水墨画のような、かつて見たことのあるような景色が石に現れているのが、煌めく宝石よりも魅力的に私の目には映ったのでした。

何気ない日常の景色や、旅先で何気なく撮った写真を見返して思いを馳せる気待ち。
そういった心のどこかにあるぼんやりとした記憶のようなものを表現出来たらいいな、という思いから出来たシリーズです。
写真のような印象を持たせられるよう、シンプルな覆輪の枠をひとつひとつ石の形に合わせて作っています。